広告医学(AD-MED)とは?

 従来の医学研究は、病気や症状への対処法(治療)の確立を目指していました。一方、医療や健康に関する情報を扱う主体が一般の人々に急速に移りつつあるいま、病気に至る以前の方々、いわば、生活者にコミュニケーションを図る活動の重要性が増しています。これらを実現するための新たな学術体系として、広告医学(AD-MED)が立案されました。

 

『広告医学』(AD-MED)とは、横浜市立大学のグループが世界で初めて提唱した概念で、デザインやコピーライティングなどといった、わかりやすく、人々に影響を与える広告的視点を取り入れることで、生活する人々の行動変容(Behavior Change)を実現する「コミュニケーション」を研究し、生活者の目線からさまざまな医療問題の解決を目指す体系のことを示しています。大学、企業、自治体が連携を図りながら、共同で研究開発プロジェクトを推進しています。


なぜ広告医学(AD-MED)?

 世界保健機関(WHO)のデータによると、現在世界中で年間3,000万人を超える人々の死が、日常生活と関連する疾病とされています。これまでは専門性の高い治療が要求される感染症(Communicable Disease)が疾病の過半数を占めていましたが、近代医学の進歩に伴って生活習慣病を代表とする非感染性疾患(Non-Communicable Disease)が死因の多くを占めるようになりました。このような病の質的変化がもたらされた結果、現在では、ウェアラブルデバイスをはじめとした多様なテクノロジーが研究され、食や運動習慣に関する健康情報の日常的取得とそのフィードバック技術を確立する動きが本格化しています。

 

一方で、スマホやアプリなどの情報通信(ICT)技術で得られる情報を使い、人は理性的に判断し、健康行動が実現されるのでしょうか? 私たちは、実は人々の行動変容やその持続には、「楽しみ」、「親しみ」、「ついつい」などといった、広告的なコミュニケーションで重要とされる要素が不可欠であると考えています。そのため、広告医学ではプロジェクトチームを編成し(広告医学PJ)、より人間的な視点から身の回りの生活環境、アイテム、サービスなどをデザインし、その効果の検証を進めています。


広告医学の取り組み

 広告医学PJでは、大学のある横浜市を中心に、自治体と連携のもと、複数の関連企業とともに、右図のような3つの要素を軸にさまざまな社会実験型プロジェクトや商品開発を並行して進めています。


広告医学PJで扱うコミュニケーションとは、非常に広範な概念です。情報・通信技術(メディアサービス、スマホ・PCアプリサービス、医療機関向けサービス)に加え、身の回りの環境に関するもの(プロダクトデザイン、住宅・職場・病院などのスペースデザイン、インフラデザイン)、対象者に働きかける教育やサービス(保健指導プログラム、義務教育プログラム、一般向けセミナーシリーズ)など複数領域にまたがる研究活動を進めています。最終的には、有効な方法論を統合させることにより、コミュニティ開発へと応用していくことを目指しています。

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